美味しいおやつのこだわりや想いについて、生産者さんのお話をお伺いするSnaq Story。前編では田野島さんのつくるドライフルーツのこだわりや開発の裏話について迫りました。そして、今回は、おいしいドライフルーツを生み出すママ野菜ソムリエが、農業の世界に飛び込んだきっかけや、ドライフルーツに込められた想いについて伺います。
体調を崩したことをきっかけに、農業の道へ

– 田野島さんのお仕事について教えてください。
田野島さん
「食のプランニング、各種講師、フードコーディネートのほか、自ら産地を歩き選び抜いた食材を使った茨城県産の無添加ドライフルーツの製造・販売を手がけています。」
– 農業という道にすすんだきっかけは何でしたか?
田野島さん
「高校生の頃、腰痛や胃腸炎、喘息などで体調を崩し始め、専門学校時代には症状が悪化。薬を飲み続けながら、野菜を煮込んだスープなどの消化の良い食べ物しか食べられない生活になったんです。体調を崩して、食べることの大切さに気づきました。体調改善のために、野菜を自分で作ったり、美味しく食べられるように調理したりする中で「野菜の個性」を興味深く感じました。
自分の身体にいいものを自分で選択するということは非常に大切なことなのに、現代社会ではそのことをなかなか知る機会がない。食から生活の質を揚げていくという、自身の体験を人に伝えていきたいと思い、農業や食育の世界に入り野菜ソムリエの資格を取得しました。」
美味しくて身体に良いものが減っていくのを「ゆるやか」にしたい

– 野菜ソムリエとしてのコンサルティングや食育などの活動だけでなく、ご自身でドライフルーツを作り始めたのはなぜですか?
田野島さん
「ドライフルーツの製造を始めたのは、愛する野菜や果物を育てる農家さんも農地も減っていく現状を目の当たりにしたことがきっかけなんです。
野菜ソムリエの資格を取得した後は、農業生産法人に転職して農家の一社員として働き現場経験を積み、フリーランスでの活動をはじめました。そうして、農家の知り合いのとのつながりが増えていって。
今から4年ほど前、茨城県の「果樹」の生産量が年々減っているということを知りました。野菜の現状も親しいものがあるのですが、果樹は特に高齢の方がメインで生産を行っています。その作業が大変なことも相まって、多くの農家さんが、自分たちの代でもう終わりにしてしまおう、後は継いでもらわないで良いという風におっしゃっていたんです。
でも、そうすると、美味しくて身体に良いもの知る機会が減ってしまう。減っていくことは止められないかもしれない、けれども私の働きかけで減っていくのを緩やかにしたいと思い、果物の加工品の開発に取り掛かり始めました。
そもそも、果樹の生産現象の背景には消費の減少がありますよね。特に若い世代が、面倒で食べなかったり、旬を知らなかったりということも、大きく関わっていると感じ、手軽に素材本来の味を楽しめるドライフルーツにたどり着きました。」
生の果物を、美味しい季節に食べるきっかけを

田野島さん
「でも、本当は農家さんから買って『美味しいときに、生の果物を食べてほしい』と思っているんです。この考え方を伝える手段が、ドライフルーツ。ドライフルーツは、手軽で旬ではないときでも食べることができ、その美味しさを知ることができます。
私にとっては、加工やプロデュースは手段なんです。やっぱり、大きな目標な『農業』。
例えば、今回お届けするメロンも、値も張るしご自身で買って食べることってなかなかないと思うんですよね。ドライフルーツを食べることをきっかけに、その美味しさを知ってもらったり、5月〜7月の旬の時期に、ぜひ生で食べるきっかけにしてもらえれば嬉しく思います。」
前後編に渡って、野菜ソムリエ田野島さんのお話をお伺いしました。自然と向き合う厳しい農業の世界で、自分だけの道を進む田野島さんの情熱を感じるインタビューでした。もっといろいろな食べ物に挑戦し、食の世界を広げていきたい、もっとおいしいおやつと向き合いたい、そんな前向きな気持ちになりました。