Real Food(リアルフード)を紹介するシリーズ。今回は「本物のわらび餅」を紹介します。生産者さんの「本物は美味しい」という言葉が印象的でした。
みなさんが食べているわらび餅は、実は本物のわらび餅じゃないということをご存知でしたか?
わらび餅の”わらび”とは、山菜の蕨のこと。
蕨の根から摂れるデンプンを乾燥させて粉末状にしたものを、わらび粉と言います。
本物のわらび餅はこのわらび粉だけでできているのに対して、コンビニやスーパーなどで購入することができる市販のわらび餅に含まれるわらび粉はとても少なく、大半が加工デンプンからできています。
なぜ本物のわらび餅が普及しないのか?
こののわらび餅が流通しない理由が2つあります。
1つ目は、とても高価だから。
純度100%の本わらび粉は、希少価値が高くとても高価です。
皆さんのイメージの中にあるわらび餅は200〜300円くらいではないですか?
本わらび粉を使った本わらび餅は、1500円から2500円ほどします。
2つ目は、賞味期限が短いから。
お店で食べる本わらび餅だから高価なのは当たり前だと思った方もいらっしゃるでしょう。
しかし、この本わらび餅にはコンビニなどの小売店で販売できない理由があるのです。
それが、賞味期限が短いこと。
明治8年から続く「くず・わらび専門店 廣八堂」の方によると、
本わらび粉だけを使用したわらび餅の賞味期限はもって2時間だそうです。
高くて賞味期限が短い。
本物のわらび餅が流通しない理由を抑えたころで、なじみの深い市販のわらび餅についてみていきましょう。
市販のわらび餅
とあるコンビニエンスストアで販売されているわらび餅です。
お値段は150円、お手頃価格です。
原材料は、
『砂糖、きな粉、黒糖蜜、デキストリン、わらび粉、加工デンプン』
となっています。
この“わらび餅”に入っている加工でんぷんとは、「じゃがいもやレンコンなどに含まれているデンプンに何かしらの加工をしたモノ」のことです。
何かしらの加工とは、を語りだすとかなり細かなな内容になってしまいますのでこの場では割愛しますが、この加工デンプン、日本では立派に食品添加物として分類されています。(ちなみにですが、デキストリンも食品添加物です。)
もちろんこのわらび餅も美味しいです。
原料の一番先が「砂糖」によって、とても甘く仕上がっています。
ですが、本当のわらび餅とは全く異なっているのです。
本当のわらび餅は色から違う⁉
明治8年から続く「くず・わらび専門店 廣八堂」さんから購入した『本わらび粉』がこちらです。
それでは、わらび粉を使用した本物のわらび餅の作り方を見ていきましょう。
今回は、本わらび粉、米飴、きな粉を利用した作り方を紹介します。
まずは、わらび粉を鍋の中に入れて水で溶かしていきます。
そこに湯煎しておいた米飴を入れて、後は中火にかけて混ぜます。
すると液体状だったものが徐々に固まりだします。
火を止めてから2~3分練り続ければでき上がりです。
所要時間は10-15分程度。
そして完成した本物のわらび餅がこちら。
わらび粉が1割程度しか入っていない市販の透明なわらび餅とは異なり、わらび粉による茶色っぽい色がついています。
きな粉をつけていただきます。
お味はというと、シンプルイズベストという言葉通りの素朴な味わいです。
砂糖を使っていないのに、ほどよい甘さがします。
そして何より食感。
なかなか噛み切れないほどの弾力性があり、市販のわらび餅とは全く異なります。
わらび粉、米飴の生産者さんからのメッセージ
わらび粉、米飴という原料を作っている方々にスポットライトを当てていきます。
まずはわらび粉の生産者、廣八堂の榎木さんにお話を伺いました。
Q.わらび粉はどうやって作られているの?
蕨を1月に植えて、1年間畑で丁寧に育てて12月頃に収穫します。10kgの蕨の根っこから良い時で7%、悪い時で2-3%くらいしか本わらび粉はできません。
それ以外は全て畑の肥料にしています。ちなみに「本わらび粉」はわらび粉100%のものを指し、並わらび粉はわらび粉にタピオカや加工デンプンを加えたものになります。
Q.廣八堂さんのわらび粉は他とどこが違うの?
そもそも国産の本わらび粉を取り扱っているのはかなり少ないです。中国産の本わらび粉もありますが、粘りや食感も前々違います。これは食べていただかないと分からないでしょうけどね、笑
Q.オススメのわらび餅の食べ方があれば教えてください。
私はストレートに京風きなことして食べるのが一番美味しいと思います。あと作りたてのあたたかい時に食べてもおいしいですが、粗熱をとって、冷えてから食べるのも格別に美味しいですよ!ただし冷蔵庫で冷やすのは固くなりすぎてしまうのでオススメしません。わらび粉は練り込む作業が大事です。練り込めば練り込むほど弾力のある食感で出来上がりますので、ぜひお試しください。
Q.みなさんにメッセージがあれば
ぜひホンモノのわらびもちを食べて欲しい。市販のわらび餅はわらび粉5-10%しか使っていないものが大半。ひどいものはタピオカでんぷん100%のものもある。
廣八堂のキャッチコピーは「本物は美味しい」です。その美味しさを少しでも多くの人に伝えたいと思っています。
次に米飴の生産者、横井商店の代表横井さんにお話を伺いました。
Q.米飴はどうやって作られているの?
米飴は米やもち米などに含まれているデンプンを糖化させて作られる甘味料です。直径1mもある大きな鉄釜でお米を蒸して、大麦を発芽した麦芽「おやし」を粉砕したものとお湯、水を入れて発酵しやすい温度にして、一晩寝かします。するとデンプンが発酵して甘くなるんです。発酵したものを麻袋に入れてカスと発酵汁とを分けて、発酵汁を窯に戻して5時間かけて水分を飛ばすといよいよ琥珀色に変わります。これが米飴です。夏場の工場の室温は50℃くらいになるので大変な重労働ですよ、笑。
Q.横井商店さんの米飴は他とどう違うの?
うちの米飴はすごい柔らかいんです。なにせ「じろ飴」という名称で販売していますからね。じろ飴の由来ですが、石川県能登のあたりは昔から柔らかいことを「じゅるい」と言うんです。柔らかい飴という意味で「じゅるい飴」、それがなまって「じろ飴」となったんですね。昔の瓶やプラスチックなどなかったので柔らかい飴は販売できなかったんです。その時は米飴をずっと硬くして木桶に入れて販売していて、食べる時はわざわざ鍛冶屋さんに持っていって、切ってもらってたんですよ。本当便利な世の中になりましたよね。
Q.オススメの米飴の食べ方があれば教えてください
最近「お砂糖をとりたくない」という方からの引き合いがすごい増えています。お菓子だけでなく、魚の煮付けや、お豆料理なんかにもとっても相性が良いと思います。もともと昔砂糖がとっても希少で高価なものだった頃に米飴で代用していたと聞いてますから、お料理にも当然合うんですよね。あと砂糖と違って、飴は冷えると膜を貼るので長期で保存したい料理にも適していたみたいです。
Q.みなさんにメッセージがあれば
面白い話をしますね。うちの「じろ飴」を小さいお子さんに振る舞うとみんな「懐かしい味がする」と言って喜んでくれるんです。米飴なんて食べたことない子どもたちがですよ。不思議ですよね。昔は母乳がでないお母さんたちが母乳の代わりに米飴をお湯で溶いて赤ちゃんに飲ませていたみたいですが、ひょっとしたら僕ら日本人には遺伝子レベルで米飴を懐かしく感じるDNAみたいなのがあるんじゃないかなぁ、なんて思ったりしています。米飴はそれほどに優しい甘さなんです。わらび餅だけでなく色んな料理にもぜひ米飴を使ってみて欲しいですね!
生産者さんの声をきいてみることで、「本物のわらび餅」に、より興味がわいたのではないでしょうか。
現在本物のわらび餅を食べられる場所は限られていますが、是非お店などにうかがってみてください。
スナックミーでは『手作りわらび餅キット』も販売しております。
本物は美味しい。を是非体験してください。